丸の内エリアのビル26棟での「廃棄物収集ルート最適化」検証結果
〜SDGsや人手不足解消、業務効率化等、よりサスティナブルな街をめざして〜
株式会社グルーヴノーツ
三菱地所株式会社
株式会社グルーヴノーツと三菱地所株式会社は、AIや量子コンピュータを搭載した世界唯一のクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を活用して、東京・丸の内エリアにおいて廃棄物を効率的に収集運搬するルートを導き出す「廃棄物収集ルート最適化」検証を実施し、その効果を確認しましたのでお知らせします。尚、街全体の廃棄物収集の課題解決に向け、AIやアニーリング方式の量子コンピュータを活用して収集ルート最適化検証に取り組むのは日本初となります。
【検証サマリー】
- 検証名:「廃棄物収集ルート最適化」検証
- 検証主体:株式会社グルーヴノーツ、三菱地所株式会社
- 解析対象:東京・丸の内エリアで三菱地所が所有または運営管理する26棟のビル
- 検証方法:
- 可視化…検証に必要なデータの収集
- 予測…「MAGELLAN BLOCKS」のAI(機械学習/深層学習)で、ごみの発生量を予測
- 最適化…「MAGELLAN BLOCKS」の量子コンピュータで、最適な収集ルートを検証
- 検証結果:一日あたりの廃棄物収集作業に関わるコストの比較結果は以下の通り。
グルーヴノーツと三菱地所は、「快適で豊かな人間性にあふれた街づくり」を目指す「City as a Service(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)」を推進すべく業務提携契約を締結し、グルーヴノーツが2020年2月に実施した第三者割当増資を三菱地所が引き受けたことにより、今後さらに両社で街を舞台に様々な実証実験や本番展開を行いながら、スマートシティの実現に向けて取り組んでいきます。
1.検証経緯
三菱地所はグルーヴノーツの先進技術に対する高い技術力や深い知見を評価し、2019年9月に設立した「丸の内データコンソーシアム」において、両社でデータ活用を通じた街・社会への新たな価値や事業の創出を目指した取り組みを進めており、今回の検証はその活動の一環として実施したものです。
2.検証方法について
1.可視化:検証に必要なデータの収集
検証にあたっては、三菱地所が保有する、ビルごとの入居企業数や在勤者数、廃棄物の収集ルール等のデータに加え、廃棄物収集業務にかかる現地視察も行いながら、それぞれの廃棄物処理事業者から廃棄物の種類に応じた運搬車両の仕様、ビル/廃棄物種類ごとの回収の頻度・量・ルート・作業時間等のデータを収集・整形し、現状の可視化を行いました。
■収集・可視化したデータについて
- 過去3年間のビル26棟別の入居企業数/在勤者数、飲食や物販といったテナントタイプとその割合
- 可燃ごみや不燃ごみ、ビン・缶、ペットボトル、生ごみ、古紙など14種類の廃棄物に関して、過去3年間のビル26棟別の発生量
- 廃棄物処理事業者が保有する廃棄物14種類別の運搬車両の仕様(架装型式、サイズ、車両重量、積載可能量など)
- 廃棄物処理事業者/ビル26棟/廃棄物14種類ごとの収集頻度・収集量・収集ルート・ビル1棟あたり収集にかかる作業時間など
2.予測:「MAGELLAN BLOCKS」のAI(機械学習/深層学習)で、ごみの発生量を予測
収集したデータや「MAGELLAN BLOCKS」が提供する気温・湿度・降水量などの気象データ、地区イベント情報など、予測に影響する要因となるデータ(予測因子)をもとに、ビル/廃棄物種類ごとのごみ発生量をAIで予測するモデルを構築・評価し、実際に数か月後のごみ発生量の予測・シミュレーションを行いました。
3.最適化:「MAGELLAN BLOCKS」の量子コンピュータで、最適な収集ルートを検証
AIによるごみ発生量の予測結果に基づき、車両の積載可能量やビル・処分場の搬出入の形態・位置、収集作業時間等の制約条件を考慮して、廃棄物が発生するすべてのビルを経由して確実にごみを回収するとともに、車両台数が最も少なく、かつ移動距離が最短となるルートの組み合わせを、量子アニーリングを活用してシミュレーションしました。
3.検証結果
「MAGELLAN BLOCKS」の機械学習/深層学習と量子コンピューティング技術を活用することで、約94%の高精度でごみ発生量の予測を実現し、その予測結果に基づき、膨大な組み合わせの中から最適なルートを瞬時に求めることができました。丸の内エリアにおいて廃棄物の収集運搬業務の効率化、移動距離の最小化が実現することで、CO2排出量は約57%削減が期待できます。
AIによるごみ発生量の予測では、特に可燃や生ごみ、ダンボール等においては日ごとの傾向も微細にとらえた予測を実現するなど、90%を超える高精度な結果を算出し、実運用への容易な移行を可能にしました。ビルだけではなく地区のイベント情報や廃棄物の発生要因を細分化してデータ化する等して学習を重ねることで、さらなる精度向上も見込めます。
量子アニーリングを活用した最適解として、現状の総走行距離約2,300kmに対して約1,000kmでごみを収集する最適ルートが導き出されました。これにより、CO2の排出量は約57%削減、車両台数は約59%削減される試算となり、SDGs・脱炭素化への寄与が期待されます。
4.今後の取り組みについて
グルーヴノーツと三菱地所は、「廃棄物収集ルート最適化」の検証から生まれたデータをもとに、具体的な運用に向けたPoV(Proof Of Value:導入前検証)を行っています。さらに、ビルごとに異なる様々な廃棄物処理業者との共創を図ることで、収集業務の効率化による長時間労働の削減や人手不足の解消にも貢献していきます。
今後も、グルーヴノーツと三菱地所は、未来の都市のあり方を提案すべく「City as a Service」を推進し、AIや量子コンピュータなど先進テクノロジーを活用した導入前検証やサービス開発に取り組むことで、都市サービスのさらなる向上を目指します。
各社の取り組みについて
株式会社グルーヴノーツ
グルーヴノーツは、プログラミングや専門知識がなくても誰もが手軽に最新テクノロジーを利用できる「MAGELLAN BLOCKS」の提供を通じて、機械学習・量子コンピュータの民主化を推進しています。これまで、3,800社以上/12,500超のAIモデルを構築し、さらには世界で初めて量子コンピューティング技術の商用サービス化に成功するなど、国内有数の実績を積み重ねています。
グルーヴノーツが実現するスマートシティ:「City as a Service」
技術の発展や実用化が企業活動や都市経済の効率や機能性を高めていく一方で、人手不足や価値観の多様化・個性化といった社会情勢の変化に伴い、一人ひとりの情感に寄り添う都市環境への変容が求められています。
そこで、グルーヴノーツは、都市全体を一つのサービス空間として捉えて企業連携を推進し、培ってきたAIや量子コンピュータ等の先進技術を駆使しながら都市機能の高度化だけでなく、快適で豊かな人間性にあふれた街づくりを目指す「City as a Service」(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)の取り組みを進めています。
三菱地所株式会社
「Marunouchi UrbanTech Voyager®」は、先端技術・テクノロジーのまちづくりにおける有用性等について調査・研究を行うプロジェクトです。今回もその一環として、国際都市・東京のさらなる機能向上を目指します。
丸の内エリアのまちづくりコンセプト:「丸の内Reデザイン」
三菱地所は、2020年以降の丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)におけるまちづくりを「丸の内NEXTステージ※」と位置付け、“人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台”を創造していきます。「丸の内Reデザイン」はその実現に向け、まちづくりのあり方から変えていくコンセプトワードです。
※始動リリース: https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec200124_marunouchinext.pdf
「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」について
AIや量子コンピュータを搭載した世界唯一のクラウドプラットフォーム。数値/画像/文書等の様々なデータをもとに、AIの高精度な予測と、量子コンピュータの組合せ最適化によって、複雑なビジネス課題に対して解を導き出すことができます。量子コンピュータの活用にあたっては、人やモノ、作業、ルートなど業務上の様々な組合せ最適化問題に対して、物理学上の数式の作成から、マシン上で動作するモデル(イジングモデル)の構築まで含めて対応した独自の「組合せ最適化ソリューション」を提供します。また、ユーザーには難しい専門知識やプログラミングスキルは不要で、業務上の制約条件を入力するだけで、希望する組み合わせパターンの最適解を瞬時に導出できます。
注釈
*量子コンピュータ:従来のコンピュータ(古典コンピュータ)のように“0”または“1”で情報を処理するのではなく、物理法則である「量子力学」を原理に量子という目に見えない物質の動作を応用し、そこに計算式を当てはめることで、高速処理を実現する。
**アニーリング方式:量子アニーリング型量子コンピュータは、物理法則である量子力学の原理を利用して、膨大な組み合わせパターンの中から最適な組み合わせを探索することに特化した量子コンピュータで、「組合せ最適化問題」を高速かつ高精度に解くことができる。計算性能の向上において技術的な実現可能性が不十分な量子ゲート方式に比べ、すでに高い性能を持ち先行する量子アニーリング方式は実用化に適しているといわれている。ルート最適化やシフト最適化、スケジュール最適化、店舗最適化、積載最適化、稼働最適化など、実際の業務課題を解決するテクノロジーとして有用性が確認されている。
***日本初:廃棄物収集・運搬業務の効率化に向け、実データを用いてAI技術に加え、量子コンピューティング技術を活用して、収集ルートの最適解を探索する取り組み。
****丸の内データコンソーシアム:三菱地所株式会社と富士通株式会社が、2019年9月12日(木)に設立した、データ活用を通じて街や社会における新たな価値や新たな事業の創出を目指すコンソソーシアム。当コンソーシアムに参画した企業・組織が、アイデア創出からフィールド検証まで一貫して取り組めるよう、ワークショップやセミナーなどを開催するとともに、データ流通・利活用基盤の提供や、データ分析支援を行うデータサイエンティストによる支援を行い、あわせて実証実験や新ビジネス創出を支えるため多様な企業とのチャネルを提供。
*****膨大な組み合わせ:たとえば数の単位「京」は、1京あたり10の16乗の計算になるといわれる。この組み合わせパターンすべてをコンピュータで計算しようとすれば、現在のスーパーコンピュータであっても処理に年単位もかかるとされ、現実的に計算ができないことから「組合せ爆発」といわれる。量子コンピュータは、組合せ爆発を解決する技術となる。
【お問い合わせ先】
株式会社グルーヴノーツ 広報
pr@groovenauts.jp
※本リリースの内容は発表日時点の情報です。