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リスク分析の高度化に一役。銀行業のAI/LLM活用に途を拓くAutonomous MAGELLANの可能性

三菱UFJ銀行

株式会社三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行 リスク統括部は、グルーヴノーツと同行での資本業務提携を機に、グルーヴノーツの「Autonomous MAGELLAN(オートノマス マゼラン)」をベースに行内のAI情報収集・分析サービスとして「ComPath(コンパス)」を構築し、実証実験を行いました。リスク統括部をはじめ各部門、全国の支店への展開を前に、「ComPath」の企画からプロジェクトをリードした三菱UFJ銀行 リスク統括部の鶴田貴大氏に、経緯や現時点での評価、AI/LLM(大規模言語モデル)の活用の展望などについて伺いました。

お話を伺った方

株式会社三菱UFJ銀行
リスク統括部 調査役
鶴田貴大(つるた・たかひろ)氏

膨大かつ多様な情報源からいかに有用なリスク情報を抽出するか。
AI/LLMの活用が状況打破のカギに

背景・課題

ビジネスやリスクの外部環境変化をいち早く把握するため、三菱UFJ銀行 リスク統括部では、ネット上のリスク関連情報の収集・分析を人手で行っていた。しかし、膨大かつ多様な情報源から、有益な情報をいち早く収集・分析するには多大な労力を割く必要があり、効率的・効果的な情報収集・分析が実現できないかという課題認識を持っていた。

実際の取り組み

リスク統括部は、グルーヴノーツが提供する「MAGELLAN BLOCKS」の新シリーズ「Autonomous MAGELLAN」をベースに、行内向けAI情報収集・分析サービス「ComPath」を構築。広範な領域にまたがるリスク関連情報の分析業務を効率化・高度化することが可能か実証実験を行った。

成果

約半年のプロジェクト期間を経て、高度な言語解析により自動収集した情報の分類や要約、さらにさまざまなアルゴリズムに基づくデータ分析が実現されたことから、リスク統括部で「ComPath」の本番利用を開始。さらに、法人・リテール部門・市場部門・コーポレートセンター・全国の営業店等から幅広い要望を受け、複数の組織で試用を実施。各組織から前向きな評価が寄せられている。

今後の展開について

今後は、SNSや社内情報など対象ソースの拡大や、情報収集機能と分析機能の拡充など、「ComPath」のさらなる改善に取り組んでいく。またゆくゆくは、リスク事象の効率的かつスピーディな把握にとどまらず、将来発生するリスク事象の予兆予測の実現を目指す。

今回の挑戦の目的。それは、AIによって「攻め」のリスク管理をカタチにすることでした。

——三菱UFJ銀行 鶴田氏

リスク統括部の使命

私が所属するリスク統括部は、三菱UFJ銀行全体のリスク管理・運営による経営の安定性確保と企業価値の向上を役割とした組織です。本来であれば、新技術の導入に関しては統制側の立場ですが、生成AIの急速な普及をみてもわかるとおり、発展著しいテクノロジーに対し「守り」の姿勢に徹するだけでは環境変化に対応できなくなる恐れがあります。時代の変化に対応するには「攻め」の姿勢も重要だと考え、2023年7月に行われたグルーヴノーツ社との資本業務提携を機に、AIの力でリスク管理業務を高度化・効率化するべく、実証実験を決めました。

三菱UFJ銀行とグルーヴノーツの協業イメージ

「リスク分析」をプロジェクトテーマに決めた理由

「リスク」と一言でいっても、「市場リスク」「評判リスク」「オペレーショナルリスク」「ITリスク」など、われわれがカバーすべき領域は非常に多岐にわたります。また、昨今では企業を取り巻く外部の環境変化も激しさを増しています。リスク管理では内外状況を踏まえたプロアクティブな対応を取ることが重要ですが、こと外部のモニタリングにおいて、ネット上を流れる膨大な情報の中から、多岐にわたるリスク関連情報を人手でカバーするのは容易ではありません。かといって、既存の情報収集サービスを利用するにしても、専門性の高いリスク関連情報を集めるのは難しく、われわれのニーズを完全に満たすツールはなかなか見つかりませんでした。

こぼれ落ちた情報の中には非常に重要性の高い情報も含まれる可能性も否定できないため、打開策を探るなか浮上したのが、LLMなど自然言語処理機能を持つグルーヴノーツ社のサービス「Autonomous MAGELLAN」を使って、当行向けに情報収集・分析を行う仕組みを構築することでした。行内では、「Autonomous MAGELLAN」を「ComPath」と名づけて利用しています。

プロトタイプは週次でアップデート。実際の機能を確認しながら議論を進められたので、非常にやりやすかったです。

——三菱UFJ銀行 鶴田氏

プロジェクト期間中に直面した課題

われわれはリスク管理の専門家ではありますが、AIやLLMを業務で扱った経験はありませんでした。そのため、当初はこうした先端テクノロジーをどのような形で業務に活用すべきか、具体的なイメージすら持ち合わせていませんでした。しかしグルーヴノーツ社の担当者とのディスカッションや提案を通じて、要素技術への理解や具体的な活用イメージを深めることができ、スムーズなプロジェクトの立ち上げにつながったと実感しています。

立ち上げ以降も、われわれの「こんなことができないか」といったアイデアを都度丁寧に咀嚼いただきながら、週次ペースでプロトタイプを見せていただけたので、プロジェクト中、とくに大きなトラブルに見舞われることはありませんでした。むしろ、早々にさまざまな機能ができあがり、実際のアウトプットを確認しながら互いに議論を深めていけたので、スピーディに事が運び、非常にやりやすかった印象です。

「ComPath」実証実験の成果について

2023年7月より実証実験を行う中、外部動向モニタリングの業務効率化には一定の目処が立ったので、リスク統括部のメンバー全員に対してサービス提供を始めました。情報収集に充てていた単調作業の時間が減り、より高度な思考が求められる分析に集中できるようになったなど、非常に前向きな意見が挙がりはじめています。

また、リスク領域だけでなく幅広い領域の情報収集・分析業務に展開可能なサービスであるため、他部署への展開に向けて準備を進めることになりました。ためしに銀行全体でモニター募集を呼びかけたところ、法人・リテール部門・市場部門・コーポレートセンター・全国の営業店等から数多くのお声がけがあり試用いただいています。直近では、複数の部署から専門業務への適用に向けた具体的な相談・機能要望が挙がりはじめている状況です。

今後の展望

今後は、SNSデータや社内情報など取り扱う情報ソースを順次拡大していく計画です。またゆくゆくは、リスク事象の効率的かつスピーディな把握にとどまらず、将来発生するリスク事象の予兆予測にも挑戦したいと考えています。この実証実験を通じて、AIのビジネス活用には、ハルシネーション・著作権・プライバシーの問題など留意すべき事項が多々あることを理解できましたし、それ以上に、AIには非常に大きな可能性があることがわかりました。引き続きグルーヴノーツ社とはこの取り組みを継続させていただき、「ComPath」での利用機能を拡充していきます。さまざまな知識を補完しながら、対話を通じて、利用者の意思決定・行動を支援するサービスとして発展させていきたいと考えています。

今後、グルーヴノーツに期待することは

今回の取り組みにより、「リスク管理」という従来「守り」とされていた領域においても、AIの活用が有効であることがよくわかりました。これもひとえに、スピーディかつ的を射た提案・構築により支えてくださったグルーヴノーツ社のおかげです。

現在、グルーヴノーツ社と三菱UFJ銀行は、今回紹介したリスク統括部での取り組み以外にも、ATM運用管理の最適化やコールセンターのVOC分析など、複数のプロジェクトで協働していただいています。こうした取り組みが、いずれ新たな金融サービスの創造という形で実を結べば、社会に対して非常に大きなインパクトを残せるはずです。これからも、AIや量子コンピューティング技術など、先端テクノロジーの業務適用に豊富な知見と実績を持つグルーヴノーツ社のサポートに期待しています。

掲載日:2024年7月
構成:武田敏則(グレタケ)

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